ハスキー
八幡校の授業後、卒業生が訪ねてきた。
現在、豊橋東高校の3年生。
名古屋大学を目指して、受験勉強の真っ最中だと言う。
彼は、僕がどんなふうに受験勉強をしていたか、
どういうふうに志望大学を決めたのか、
それこそ根掘り葉掘りという言葉がぴったりくるくらい、
熱心に聞いてきた。
中学のときと同じように、
というかそれ以上に、
ガッツがあって、
マジで目指しているのがわかった。
僕が大学受験をしたのはもう二十年くらい前のことだけれど、
何とか記憶を引っ張り出しながら、
今考えてみて有効だったと思う勉強法のことなど、
色々と話した。
「何で京都にしたの?」
「まあ、昔からちょっと、京都に憧れがあったんだよ」と僕は簡潔に言った。
で、そうだったな、と思い出した。
僕は群馬県の生まれなのだけれど、
両親とも京都が好きで、
年末年始は必ず京都で過ごすのが、
僕が子どもの頃からの恒例行事だった。
父は僕と同じく、電車での移動が嫌いで、
毎年、年末三十日の夜に車で群馬を出発して、
夜通し運転して、京都に着く。
当時は、群馬から京都まで、十時間以上かかったんじゃないかと思う。
パジェロの後部座席に布団を敷いて、僕と弟はそこで寝た。
長渕剛とか中島みゆきとかビートルズとか、
カーステレオから流れてくるあまり統一感のない音楽を聴きながら。
いつから京都が明確に憧れの土地になったのかも上手く言えないし、
もう家族で京都に行くこともない。
でも、京都で大学の四年間を過ごせて、よかったなあ。
今でも、故郷の町と京都は、僕にとって圧倒的に特別な場所だ。
その二つは、代わりがきかない。
イブキ、頑張ってな。
君の合格を、そして、
君の合格が、何か素晴らしいものに続いていることを、
願っている。
そんで僕は、何とか今年中には京都に行きたいと思っている。