2008年3月、僕は中学校を卒業した。

前日の夜、僕は母親にお願いした。

「母さん、かって。」

『いいけど、どしたの急に。』

「別に何も。早くかって!」

と半ば強引に、母親にかってもらった。

今まで一度もかってもらったことのなかった僕は、

微かな高揚と僅かな後悔が溶け合う感情を隠し、

平然を装った。

不思議とその日は、心も体も頭も軽かった。

卒業式当日、中学最後の自転車通学を満喫しようと

ヘルメットに手に取り、勢い良く被った。
 
入学式当日に、初めてヘルメットを被った感覚に

近いものを感じながら、軽くなった頭を振りつつ

家を出た。

校門の手前で自転車から降り、自転車置き場に向かう。

友達におはようと言いながら、僕はヘルメットを取った。

その時、友達の『えーーー!』という声が、

自転車置き場中に響いた。

180センチ近くあった僕だったせいか、

友達の視線は少し上を向いていた気がした。

しのろー